100歳の少年と12通の手紙:世界的ベストセラー小説の映画化作品

エリック=エマニュエル・シュミットのインタビュー内容

監督がこの世界で働きたいと思うようになったきっかけは、家族が全く興味を示さないなか、自分だけが映画を独り占めしていたことだそうです。当時のお気に入りは、ルビッチ、コクトー、マックス・オフュルス、繰り返しテレビ放映されるガルボやディートリッヒの名作の数々。

ただし、映画を作ることは夢見ていたけど、別の表現方法(書くこと)により興味を覚えたので、そっちを優先するうちに作るほうは忘れてしまいました。最初に手掛けたのは舞台の脚本、そして小説。これらの双方で高く評価されたことがきっかけで、監督デビュー作となった『地上5センチの恋心』の映画化の話が持ち上がりました。

「100歳の少年と12通の手紙」を映画化することは、長い間、自分の運命と思っていたそうですが、初監督作品で難しいテーマを選ぶのは、失敗すると今後の監督としてのキャリアに影響が出ると考え、もっと易しい主題で、ひたすらチャーミングな「地上5センチの恋心」を初めてメガホンを取る作品に選びました。

「100歳の少年と12通の手紙」の原作を執筆しているとき、その内容は自分にとっては必然だったけど、テーマがテーマだけに、世間は強い拒否反応を起こすことを心配していたそうですが、実際は真逆の現象が起き、この作品を期に流行作家への仲間入りを果たし、その後のキャリアを大きく変えてしまいました。

この小説を最初に買ってくれたのは医師で、病院の職員や患者の分もと随分まとめ買いしてくれたとのこと。さらに“病院のヒューマン化に貢献し病人の立場を理解する上で役立った”との理由で、フランスの医学会から賞を受賞するにいたりました。

小説は子供同士の口コミから両親へと拡がりを見せ、世代を超越して読まれる本となりました。フランスでは160週間の長期間に渡って書店の人気ランキングに名を連ね、その後40カ国語に翻訳され、今も継続的に増版されています。

実は、映画化権を求められた際には、「小説とは違い、映像で苦しむ子供の姿を長時間見せられたら、その子が何を言っても観客の耳に入らないはず」と考えて、首を縦に振らなかったそうです。しかし、ピザ屋の女主人であるローズの視点からのストーリーを加えるアイデアを思いついて、やっと決断するに至りました。

本と同じ感情を吹き込みつつ、彼女の軌跡を加えていきました。「人は耐え難いことに直面したらどうするか?」、「長くはない命を信じ助ける強さを、どうやって自分の中に見つけていくのか?」と。ただし、彼はローズを聖人として高いところに描くのではなく、我々と同じように生きて、セクシャリティもあって、借金も抱えている普通の女性として登場させています。彼女は犯した間違いのために自分を責めて“つぐない”をしてる訳じゃない。彼女はオスカーと出逢い、自分を発見し生まれ変わる一方で、彼が死ぬことを助けてもいる。それに気付いたとき、やる価値があると思ったそうです。

この映画を通じて彼が発見したのは、オスカー役のアミールをはじめとする子役の凄さだそうです。死を迎えるシーンでさえ、役になりきり、良い話を伝え感情を表現することに幸せを感じていた。大人になると、大人はなぜこういう自由な姿勢を失ってしまうんだろう、と。あのシーンでは、マックス・フォン・シドーやミシェル・ラロックですらカットのたびに我慢していた感情を一気に吐き出していたそうです。でも、一人での作業に慣れていた彼は、この映画で皆でそういった感情や感動を共有する美しさを発見できたのが嬉しかった。あとは、映画の中でスパイスとして登場するレスリングの撮影では、彼の中の子供の部分=オスカーだったということに気づきました。薬がもう自分を助けてくれなくても、ユーモアや想像力によって救われることができるんだよ、と。